ロットとはFXの取引単位のことです。
海外FXでの1ロットは基本的に10万通貨です。
しかし、このロットという単位のルールや規格はFX業者によってバラバラ。
同じ1ロットの取引でも、業者・口座タイプ・取引銘柄が違えば、実際の取引数量・必要証拠金・損益は変わります。
これが多くの初心者を混乱させる主な原因です。
トレーダーは「元手資金はいくらか?」「いくら稼ぎたいか?」「損失はいくらまでなら許容できるか?」に応じて、自分でロット数とレバレッジを決めて取引しなくてはいけません。
それには、ロット数に応じた損益の計算方法と、資金に応じた注文可能ロット数の計算方法を知る必要があります。
そのため、この記事ではロットにまつわる必要知識を以下の3つポイントに分けて徹底解説していきます。
- ロットと通貨の違いとは?
- ロット数に応じた損益の計算方法
- 資金に応じた注文可能なロット数の計算方法
通貨とロットの違いとは?
最初に、FXの取引単位「通貨」「ロット」の違いについて理解しましょう。
考え方はとてもシンプルです。
例えば、日本で販売されている350ml缶ビールは、一般的に1ケース24本入りです。
酒屋さんに缶ビールを注文するときに、1ケースと言って注文するか、24本と言って注文するかでは、言い方に違いがあるだけで注文内容は同じですよね?
FXも一緒です。FXはレバレッジをかけるほど少ない資金でたくさんの通貨を取引できます。
そのため、大きな取引をする際には、一定数量の通貨をまとめて1ロットと呼んで注文したほうが圧倒的に便利です。
つまり、ロットとはトレーダーが扱う数字の桁数を少なくして発注ミスを防ぐためのものなんですね。
「通貨」は全てのFX業者共通の取引単位
「通貨」とは、全てのFX業者が共通で使用している取引単位です。
通貨ペアで左側に表示されている通貨を「取引通貨(または主軸通貨)」、右側に表示されている通貨を「決済通貨」と呼びます。
「取引通貨」は取引対象の通貨
FXで「通貨」と言えば主に取引通貨のことを指しています。
注文時に指定するのは、この取引通貨の量です。
例えば、USD/JPY(米ドル円)の場合はUSDが取引通貨なので1ロットは10万米ドル、EUR/JPYの場合はEURが取引通貨なので1ロットは10万ユーロとなります。
「決済通貨」は損益が発生する通貨
反対に右にあるJPYは決済通貨と呼ばれ、損益が発生する通貨です。
例えば、「USD/JPY 買い」とは決済通貨JPYで取引通貨USDを買うこと、「USD/JPY 売り」とは取引通貨USDを売って決済通貨JPYを買うことを意味します。
取引単位が「通貨」だと桁数が多くて不便
少し話が脱線しますが、USDを持っていないのにUSD/JPYの売り注文ができたり、元手資金が少ないのに普通ならあり得ない高額の外貨を取引できるのは、証拠金を担保にFX業者からJPYやUSDを借りて取引しているからです。
ただ、取引単位に「通貨」が使用されていると、高額取引をする際に桁数が多すぎて正確性・利便性が悪いんですよね。
桁を一つ間違えたら大惨事です。
そのため、一定量の通貨をひとまとめにした「ロット」という単位が生まれました。
「ロット」はFX業者固有の取引単位
「ロット(Lot)」とは、FX業者が決めた取引単位です。
センチ(cm)やキログラム(kg)のような国際単位ではありません。
1ロットの大きさは、取引ツールでチェックできます。
海外FX業者の多くが採用しているMT4であれば、取引銘柄を右クリックしてメニューにある銘柄
を選択し、表示されたウィンドウにある契約サイズ
という箇所が1ロットの大きさです。
海外FX業者はだいたい1ロット100,000通貨が基本
1ロットの大きさは、FX業者・口座タイプ・取引銘柄によって変わります。
海外FX業者のメジャー通貨ペアであれば、基本的に1ロット100,000通貨がデファクトスタンダード(事実上の標準)となっています。
100,000通貨とは、USD/JPYなら100,000米ドル、EUR/JPYなら100,000ユーロと同じ意味です。
1ロットの大きさ = 100,000米ドル(100,000通貨)
※ 海外FX業者・スタンダード口座・USD/JPYの場合
取引を始める前に、そのFX業者の取引ルールを把握しましょう。
業者によって取引単位・最小取引数量が違う
FX業者 | 取引ツール | 取引単位 | 最小取引数量 | ||
---|---|---|---|---|---|
USD/JPY | ZAR/JPY | XAU/USD | |||
XM Trading |
MT4 MT5 |
ロット | 0.01ロット 1,000通貨 |
0.01ロット 1,000通貨 |
0.01ロット 1オンス |
AXIORY |
MT4 cTrader |
ロット | 0.01 ロット 1,000通貨 |
0.01 ロット 1,000通貨 |
0.01 ロット 1オンス |
iFOREX |
独自ツール | 通貨 | 1,000通貨 | 16,000通貨 | 0.8オンス |
ヒロセ通商 |
独自ツール | ロット | 1ロット 1,000通貨 |
1ロット 1,000通貨 |
取扱なし |
GMOクリック証券 |
独自ツール | 通貨 | 1万通貨 | 10万通貨 | 取扱なし |
SBI FX トレード |
独自ツール | 通貨 | 1通貨 | 1通貨 | 取扱なし |
※XM Tradingは、スタンダード口座・XM Zero口座の場合
上記の表は、代表的な海外FX業者XM Trading・AXIORY・iFOREX、代表的な国内FX業者ヒロセ通商・GMOクリック証券・SBI FX トレードの、取引ツール・取引単位・最小取引数量をまとめたものです。
取引ツールにMT4・MT5を採用する業者の多くは、取引単位に「ロット」を採用しています。
反対に、独自ツールを採用している業者は、取引単位に「通貨」を採用する傾向にあります。
また、最小取引数量も業者や口座タイプによって違いますし、1ロットの大きさも取引銘柄によってバラバラ。
ここはとても混乱しやすい部分なので、初心者の人は注意してくださいね。
MT4・MT5・cTraderの取引単位は「ロット」
なぜ、MT4・MT5・cTraderを採用している業者の多くが取引単位に「ロット」を採用しているのかというと、単純にシステムの仕様に合わせているからです。
上記はMT4の注文画面ですが、数量(ロット)の指定方法は、プルダウンで選択するか直接入力する仕様になっています。
独自ツールの取引単位は「通貨」が多い
基本的に独自ツールを採用している業者は、取引単位に「通貨」を採用しているところが多いようです。
ただ、ヒロセ通商のように「ロット」を採用しているところもありますね。ちなみに、ヒロセ通商の1ロットは1,000通貨です。
MetaQuotes社製のMT4・MT5や、Spotware Systems社製のcTraderとは違い、自社開発の独自ツールを採用する国内FX業者や一部海外FX業者は開発段階で取引単位を自由に選べます。
取引単位に「通貨」を採用すると、大口取引では桁数が大きくなることで間違った注文をしやすくなるのですが、そこは各業者が取引ツールに独自の対策を施すことでデメリットを克服しているようです。
上記は取引単位に「ロット」を採用しているヒロセ通商の注文画面です。この業者は、注文画面に1Lot=1,000
などと表示することで、取引銘柄によるロットの大きさの違いをトレーダーにわかりやすく伝えています。
上記は取引単位に「通貨」を採用しているGMOクリック証券の注文画面です。この業者は、注文画面に×10,000
という独自の取引単位をつけることで、トレーダーが入力する値を最小限に抑えています。
上記は取引単位に「通貨」を採用しているSBI FX トレードの注文画面です。この業者は、独自ツールの注文画面に+1千
、+1万
、+10万
、+100万
といったボタンを配置することで、トレーダーの負担を軽減しています。
上記はiFOREXの注文画面です。
iFOREXは海外FX業者としてはめずらしく、独自ツールと取引単位「通貨」を採用しています。
iFOREXの取引ツールは基本的にとても使いやすいのですが、取引数量の設定箇所だけは国内FX業者のようにミスを防ぐための工夫がされておらず、全ての桁を手入力しなくてはいけないため少々面倒です。
「ロット」を採用する海外FX業者は利便性が良い
独自ツールを採用する業者は、乗り換えのたびに取引単位のルールや取引ツールの使い方を覚え直さなくてはいけないので、非常に利便性が悪いんですよね。
その点、MT4・MT5・cTraderを採用する海外FX業者であれば、取引ツールの使い方は全社共通。
取引単位に「ロット」が採用されていたり、1ロット100,000通貨であったりとルールもほぼ共通なので、海外FX業者のほうが気軽に業者を乗り換えられます。
一部の海外FX業者には1ロット1,000通貨の口座もある
ちなみに、XM Tradingには1ロット1,000通貨で取引できるマイクロ口座と呼ばれる少額取引専用口座が存在します。
取引単位 | 最小取引数量 | |
---|---|---|
マイクロ口座 | 1ロット=1,000通貨 | MT4:0.01 ロット=10通貨 MT5:0.1ロット=100通貨 |
スタンダード口座 | 1ロット=100,000通貨 | 0.01 ロット=1,000通貨 |
XM Zero口座 | 1ロット=100,000通貨 | 0.01 ロット=1,000通貨 |
この口座なら、MT4は0.01 ロット10通貨、MT5は0.1ロット100通貨から取引できますよ。
ただ、もちろん少額取引になるほど利益は少なくなります。
海外FX業者の魅力は、数百から数千倍のレバレッジをかけて少ない資金で大きな取引をして大きな利益を狙えるところ。
そのため、XM Tradingマイクロ口座のような口座を取扱っている業者は、ほんの一握りです。
ロット数に応じた損益の計算方法
1ロットの取引ではどのくらい稼げるのか気になりますよね?
例えばUSD/JPYであれば、1ロットの損益は価格変動1pipsあたり1,000円ずつ、1pointあたり100円ずつ変動します。
1ロットの損益 = 1pips1,000円 | 1point100円
※ USD/JPYの場合
ここで「pips(ピップス)」「point(ポイント)」という新しい言葉が出てきましたが、この2つも「通貨」「ロット」と並んで真っ先に覚える必要のある重要な言葉です。
せっかくなので、一緒に覚えてしまいましょう。
pipsは全社共通・pointは業者固有の価格変動単位
「通貨」は全社共通の取引単位、「ロット」は業者固有の取引単位でしたね?
「pips」「point」もこれと似ていて、「pips」は全社共通の価格変動の単位、「point」は業者固有の価格変動の単位のことです。
pipsとは、USD/JPYの場合は小数点以下2桁目の数字、EUR/USDの場合は小数点以下4桁目の数字を指します。これは全社共通のルールです。
一方、pointとは表示価格で最も小さい桁(一番右側にある桁)のことを指していて、これが価格変動の最小値となります。
この「point = 最も小さい桁 = 価格変動の最小値」は業者ごとに違うので、実際の取引ではもちろんのこと、参考書や解説サイトなどを見るときにも注意してください。
一般的な海外FX業者では、USD/JPYの場合は小数点以下3桁を採用、EUR/USDの場合は小数点以下5桁を採用しています。
この桁数が多い業者ほど、目まぐるしく価格が変動するするので、必然的に利食い・損切りのチャンスも増え、取引で柔軟に立ち回ることが可能です。
つまり、pointとはトレーダーが取引を有利に進められるために業者が付加してくれている独自サービスなんですね。
また、「◯pips」「◯point」のように、価格差を表す単位としても使われます。
例えば、123.456円と123.466円の価格差は「1pips」または「10point」です。
特にpipsは全社共通なので、円換算せずそのまま損益の単位として使っても便利ですし、利食い幅・損切り幅・スプレッドを表すときにも使われます。
損益はロット数に比例して増減する
損益は以下の計算式で求めることができます。
USD/JPYの場合:取引数量(米ドル) × 0.01(円)
EUR/USDの場合:取引数量(ユーロ) × 0.0001(米ドル)
USD/JPYの場合:取引数量(米ドル) × 0.001(円)
EUR/USDの場合:取引数量(ユーロ) × 0.00001(米ドル)
取引銘柄と計算式内の単位には注意してください。
例えば、USD/JPY・1ロットの取引は価格変動1pointあたり100円ずつ増減しますが、EUR/USD・1ロットの取引は1ドル123円の場合だと価格変動1pointあたり123円ずつ増減します。
損益は、ロット数に応じて以下のように変動します。
取引数量 | 損益 | |
---|---|---|
1pipsあたり (10pointあたり) |
0.1pipsあたり (1pointあたり) |
|
0.01 ロット 1,000通貨 |
10円 | 1円 |
0.1ロット 10,000通貨 |
100円 | 10円 |
1ロット 100,000通貨 |
1,000円 | 100円 |
※ 小数点以下3桁の場合
0.01ロットの少額取引では全然稼げない
海外FX業者の多くは、最小取引数量が0.01ロットです。
ただ、0.01ロットの取引では価格変動1pointあたり1円ずつしか変動しないので全然稼げません(USD/JPYの場合)。
そのため、なるべく大きなロットを取引したいところですが、もちろんロットを増やすほど資金(必要証拠金)が必要となります。
資金に応じた注文可能ロット数の計算方法
では、自分が注文できる最大ロット数(注文可能ロット数)を計算してみましょう。
注文可能ロット数は、資金(有効証拠金)とレバレッジによって変わります。
いつもなんとなくロット数を決めていてはダメです。
資金に見合った取引をするために、レバレッジで必要証拠金を調整しつつ「求める利益」「許容できる損失」を考えて、慎重にロット数を決めなくてはいけません。
ここで「必要証拠金」という新しい言葉が出てきました。
これもFXでは非常に重要な言葉なので、先に解説しますね。
すでに知っている人は、おさらいしておきましましょう。
レバレッジを高くするほど少ない資金で取引できる
必要証拠金とは、ポジションを保有するために業者に差し出す担保のことです。
現在レート × 取引数量(通貨) ÷ レバレッジ
例えば、USD/JPYを1ロット取引したい場合、1ドル100円・レバレッジ1,000倍であれば、必要証拠金は10,000円となります。
1ロットの必要証拠金 = 10,000円
※ USD/JPY・1ドル100円・レバレッジ1,000倍の場合
もし、レバレッジが半分の500倍であれば、必要証拠金は20,000円です。
つまり、レバレッジが高くするほど少ない必要証拠金で取引できるというわけです。
レバレッジ | 取引数量 | ||
---|---|---|---|
0.01 ロット 1,000通貨 |
0.1ロット 10,000通貨 |
1ロット 100,000通貨 |
|
1倍 | 100,000円 | 1,000,000円 | 10,000,000円 |
25倍 | 4,000円 | 40,000円 | 400,000円 |
100倍 | 1,000円 | 10,000円 | 100,000円 |
500倍 | 200円 | 2,000円 | 20,000円 |
1,000倍 | 100円 | 1,000円 | 10,000円 |
※ 現在レート:1ドル100円の場合
レバレッジ1,000倍なら0.01 ロット100円から取引できますし、レバレッジを半分の500倍にしたとしても2倍の200円でOKです。
口座資金によって注文できるロット数には限度がありますから、必然的に高いレバレッジで取引できる海外FX業者に人気が集中するんですよね。
注文可能ロット数を計算しよう
最後に、自分が何ロットまで注文できるか計算してみましょう。
有効証拠金 ÷ (1ロットの大きさ × 現在レート ÷ レバレッジ)
※ 有効証拠金とは口座残高に未実現の損益(含み益・含み損・スワップポイントなど)を加えた証拠金残高のこと。
例えば、有効証拠金100,000円(口座残高100,000円・保有ポジションなし)・1ロットの大きさ100,000米ドル・現在レート1ドル100円・レバレッジ1,000倍とすると、USD/JPYの注文可能ロット数は10ロットとなります。
有効証拠金をベースに考えるので、保有ポジションの損益がプラスかマイナスかによって注文可能ロット数が変わります。
ひとまず、損益がプラスならよりたくさん注文でき、マイナスなら少なくなるとだけ覚えておけばOKです。
有効証拠金とレバレッジによって、注文可能ロット数は以下のように変化するので、今後の取引の参考にしてみてください。
有効証拠金 | レバレッジ | ||||
---|---|---|---|---|---|
10倍 | 50倍 | 100倍 | 500倍 | 1,000倍 | |
10,000円 | 0.01 ロット | 0.05ロット | 0.1ロット | 0.5ロット | 1ロット |
50,000円 | 0.05ロット | 0.25ロット | 0.5ロット | 2.5ロット | 5ロット |
100,000円 | 0.1ロット | 0.5ロット | 1ロット | 5ロット | 10ロット |
500,000円 | 0.5ロット | 2.5ロット | 5ロット | 25ロット | 50ロット |
1,000,000円 | 1ロット | 5ロット | 10ロット | 50ロット | 100ロット |
1,500,000円 | 1.5ロット | 7.5ロット | 15ロット | 75ロット | 150ロット |
2,000,000円 | 2ロット | 10ロット | 20ロット | 100ロット | 200ロット |
※ 現在レート:1ドル100円の場合
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